サンマルクは、2021年3月期(連結)が67億7,300万円の赤字となり、2006年以降初の赤字となりました。売上高・純利益ともに順調に伸ばしてきたサンマルクですが、新型コロナでオフィス近くのカフェが閑散とした状況にあり、大幅に業績が落ち込みました。

一方で、同業のコメダ珈琲は55億1100万円(営業利益)の黒字化にも成功しており、サンマルクがサンマルク35億2800万円の営業赤字を出しているのと対照的です。

コメダは、郊外に店舗を構えることが多くサンマルクなどのコーヒーチェーンと立地の差別化をしています。ブレンドコーヒーは1杯430円ですが、居心地を良くすることで滞在時間を長めにして、客単価をあげることに注力しています。

居心地の良さに対応できてない

カフェチェーンでは、スターバックス、コメダが勢いを伸ばしているのに対して、サンマルクカフェは、出店が400店舗から伸びずに失速しています。安いコーヒーをその場で飲むという目的を果たすだけであれば、コンビニの100円コーヒーでイートイン、マクドナルドの100円コーヒーと競合してしまいます。

従業員教育などが微妙だという声もネット上でよく見られていて、料理の提供時間が遅かったり、料理が出てこなかったりと、従業員の質の低さが指摘されています。どのファミレスでも従業員の質の低さは問題になっています。働く人がいないので、「面接に来たならば、誰でもいいから採用する」という状況になっているのです。日本の少子高齢化が加速していることによる人手不足は、他国に見られないほど深刻なものになっています。

低賃金で継続して働いてくれる人材に何も期待することができません。この人材不足の問題は、2016年頃には既に表面化し始めていましたが、年を追うごとにいよいよ深刻度を増してきています。

パンを買うと高いと感じる

サンマルクカフェは、パンを売りにしており、それで客単価をあげるようにしています。それで業績を伸ばしてきたのですが、それがお客の需要とずれが生じるようになってきた可能性があります。サンマルクのランチセットは、パン、サンドウィッチ、コーヒーのセットなんですけど、パン2つは要らないよなと思ってしまいます。

パンというのは、日本人の主食にならないものですので、パンはお菓子の扱いです。それが時代にあっているか?ということなのです。ターゲットが若い男女であれば、価格設定を抑えて「お得感」を出さないといけません。サンマルクは、客単価が高すぎるので、若い男女が入りたがらなくなっていると予想します。1回カフェに入ると500円以上の支払いになる店舗は、なるべく避けたくなります。顧客の節約志向が強くなると、今まで高単価を目指してきたお店が売れなくなるのです。

2015年94店、2016年93店、2017年68店舗、2018年63店舗と、ペースが鈍化していきました。日本人の消費力が落ちるのにあわせて、高価格帯のカフェから足が遠のくことになっていったのです。特に若い人ほど金がないですからね。

ファミレスと競合している

ファミレスのコーヒーの質があがり、さらにガスト&ジョナサンでは電源・Wifiも付くようになったことで、ガスト&ジョナサンは「安くて心地良い空間」を提供できるようになってきています。パソコン広げて3時間ぐらい仕事しても、何も言われることはありません。今のファミレスは、まるでサブオフィスのように使えるのです。でも、コーヒー店は、単価が高いのにそんな使い方ができません。

サンマルクは、高所得者層が行く場所ではなくて、低所得~中所得の人が行く場所なので、その層に合わせた価格帯にしなければ客が入らなくなるのです。

株主優待で20%割り引き

サンマルクは、株主優待を使うことで、多くの店舗で20%割引きを受けることができます。これが個人株主にとにかく大人気で、多くの個人株主がサンマルクの株を持っている訳です。

今の株価は、2012年以降で最も低い株価になっていて、新株発行による70億円の増資を行った結果、1株当たりが薄くなって株価の下落を招いてしまいました。4000円を超えていた株価は、今では1600円になっていますので、投資家の損失も少なくありません。

1年間にサンマルクで1万円消費したとすれば、20%の割引は2000円ぐらいです。大きな損失を抱えた投資家にとって、この金額は微々たるものでしょう。実際、サンマルクの株主優待は、メルカリで2500円ほどで売買されています。

株価が1600で100株=16万円で2500円の優待なので、優待利回りは、1.56になります。適正株価を優待利回りから考えると、1000ぐらいが妥当と言える数字になるでしょう。

カリスマ社長の死去

サンマルクを30年で全国チェーン店に押し上げた片山直之さんが2018年8月に60歳という若さで死去してしまったことで、サンマルクがさらに厳しい状況に追い込まれています。

問題点はいくつか指摘されていますが、オペレーションが満足に行えていない店舗があったりするなどして、既存の店舗が顧客満足度があがらず、新規の出展も行き詰まりを見せているということです。既存店で稼ぐことができないと、資金に余裕がなくなるので、新規出店もできないわけです。

オペレーションがヤバイのはサンマルクに限った話ではなくて、ラーメン店の日高屋はカフェ以上に「誰も採用できない状況」なので、外国人ばかりになっています。